■「水の呼吸」の剣士たち

「呼吸」にはさまざまな種類がある。コミックス7巻では「炎・水・風・岩・雷が基本の呼吸だ」とあり、コミックス17巻では、炭治郎の先輩にあたる村田が引き合いに出され、このような説明があった。

<(※村田さんが)使っているのは水の呼吸なのですが 薄すぎて水が見えません>

<【注】水の呼吸は初心者にも易しいため、一番多くの剣士に使われています。>(17巻・第146話の後、幕間ページ参照)

 この説明からわかるのは、「水の呼吸」の剣士が大勢いること。そして、入隊試験という初期の段階で「水の呼吸 肆ノ型・打ち潮」をあれほど見事に出すことができた炭治郎には、「水の呼吸」の才能が確かにあった、ということだ。

■水柱・冨岡義勇からの期待

 次の「柱稽古編」では、水柱・冨岡義勇が炭治郎に「お前が水の呼吸を極めなかったことを怒ってる お前は水柱にならなければならなかった」と口にするシーンがある。あの義勇がそこまで言うほど、「水の呼吸」の剣士たちの中で、炭治郎の才は突出したものだったことがわかる。しかし、義勇の期待とはうらはらに、炭治郎は自分の「水の呼吸」の攻撃力に限界を感じていた。

 鬼の実力者「下弦の伍」の累(るい)との激戦で、死の危機に陥った炭治郎は、亡き父の「ヒノカミ神楽」を思い出し、これを剣技として顕現させることに成功する。父・炭十郎から教えられた神楽は、「始まりの呼吸」である「日の呼吸」の使い手・継国縁壱から竈門家の先祖に継承されたものだった。刀鍛冶の里編では、竈門家と“鬼殺”との縁が補完エピソードで語られ、「ヒノカミ神楽」が炭治郎らに伝わった経緯が明らかになっていた。

■「水の呼吸」と「日の呼吸」

 炭治郎の場合、「水の呼吸」よりも、「ヒノカミ神楽」の方が、明らかに威力は大きい。ならば「水の呼吸」は“劣った技”なのか。決してそんなことはない。実際、炭治郎と同じく「水の呼吸」を使う義勇は、一瞬で累を倒している。炭治郎は「水の呼吸」を高いレベルで使用することはできていたが、明らかに義勇の方が技の精度が高い。この事実は、義勇こそがやはり「水柱」であることを示している。これは「呼吸」と戦闘特性との相性の問題である。

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必要だった「戦いの原動力」