※画像はイメージです。本文とは関係ありません(francescoch / iStock / Getty Images Plus)
この記事の写真をすべて見る

 数学嫌いのビジネスパーソンにこそ「数式のすごいパワー」を知ってほしいと話すのは、『東大・京大生が基礎として学ぶ 世界を変えたすごい数式』の著者で、大手金融機関でクオンツ(金融工学や統計学などの数式を駆使して金融市場の分析や予測を行う専門家)や、データサイエンティストとして働く冨島佑允さん。Chat-GPTなどのAIや車の自動運転、メタバースなど、技術の源となる「数式」を読み解く力は、ビジネスの現場では今後、必須能力となると考えられます。そこで鍵となるのが、冨島さんが提唱する「数式読解力」です。数式を物語的に“読む”とはどういうことなのか? お話を伺いました。

*  *  *
――これまでにも数学の本や、物理学の本をたくさん書かれています。今回の本は今までの著作と比べて、どんな違いがありますか?

冨島:これまでは、もともと「数学について知りたい」という思いがある人に向けて、微分積分や統計学など、数学で扱ういろんな分野についてわかりやすく伝えることに主眼を置いてきました。しかし今回の本は「わかりやすく伝える」ことに加えて、数学が持つとてつもない「パワー」を知ってもらいたいと思ったのが、執筆のいちばんの動機でした。人類の歴史において数々のイノベーションを起こし、世の中を変えていく原動力でもある数学の力を解説したいと考えたのです。

――なるほど、確かに本書を読むと、「数学のすごいパワー」を誰でも理解できます。読み始める前は、「ちょっと難しいかも?」と心配でしたが、事例の面白さに一気に読み通せました。

冨島:それはとても嬉しいです。

――「数式」という言葉を見るだけで「難しそう」と感じてしまう人もいます。あえて「数式」をテーマにしたのはなぜでしょうか。

冨島:「とっつきにくい数式を、小説や物語のように『読んで』ほしい」というのが理由です。数式に含まれている意味を理解し、それが実際に私たちの日常にどんなふうに使われているのかを知ると、数式の奥に広がっている深い世界に出合うことができ、世の中をまったく別の角度から捉えられる視点が得られるんです。その体験を、一人でも多くの人に味わってもらえたら嬉しいですね。

次のページ
AIは「ブラックボックス化」の最たるもの