損害保険代理店の登録を取り消す処分が出されたBM。写真は都内の店舗

 自動車保険金水増し請求、街路樹に除草剤をまく……。不祥事が次々と明らかになった中古車販売大手ビッグモーター(BM)。社員たちはコンプライアンスを無視し、利益重視を優先する企業文化に染まっていった。これはBMに限ったことではない。常識を外れた「企業の論理」に流されないためにできることは。AERA 2023年12月11日号より。

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 問題は中古車販売大手ビッグモーター(BM)に限らない。誰もが、いつの間にか企業や組織の論理に染まってしまう可能性がある。

 東京都内のメーカーで働く30代の男性は、取材に悩みを打ち明けた。

 入社した頃は、顧客のために、誇りをもって仕事をしてきた。だが、「気づいたら、会社で評価されそうな仕事ばかり選んでいたんですよね。組織の価値観が、そのまま自分の価値観になっていたんです」。

小川仁志(おがわ・ひとし)/哲学者。商社、市役所の勤務などを経て、山口大学国際総合科学部教授。専門は公共哲学。「哲学カフェ」を主宰(写真:本人提供)

 哲学者の小川仁志さん(山口大学教授)はこう語る。

「もしかしたら会社に『洗脳』されているかもしれません」

 ただ、小川さんは「組織に所属することで人は変わってしまうというより、本質として、人間は弱いのです。パスカルは人を『考える葦』と言いました。葦は弱い植物です。人間は、考える能力を持っているのに、考えることを避けて、誰かに従ってしまうのです」という。

 社内で社是を唱和したり、研修を受けたりして、会社員生活を送る中で一定の価値観が植え付けられているかもしれない。組織に所属するうちに、組織や会社の価値観が、いつの間にか自分にとって「当たり前」だと思ってしまうのは、なぜか。

 小川さんは言う。

「思考停止したまま過ごした結果、頭の中が枠にはまってしまうからです。枠の中に閉じこもったままでは、おかしいのかどうかの判別ができず、どのように改善したらいいかもわからなくなります」

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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