笹野さんがいまもっとも力を入れているのは「ウェルネス」を意識したサウナプロデュースだ。診療所に併設するサウナなど、医師や薬剤師の協力も得ながら、エビデンスレベルで健康や医療を意識したサウナのプロデュースを最近、手がけるようになってきたという。ウェルネスへの意識が高まってきた理由は、何より「将来の自分のため」と笹野さんは言う。

笹野美紀恵さんがプロデュースした「風SAUNA」

「将来、自分が高齢になったときには、さまざまな不調も抱えているかもしれず、いまと同じようには水風呂に入れないかもしれない。さらに、もし、乳がんの手術をしていて手術痕があったら、人と一緒にサウナに入りたくないかもしれない。そうした、いずれ高齢になったら誰もが抱えるかもしれない不安や悩みに配慮したサウナや温浴・リハビリ施設を、自分のためにもつくりたいと考えるようになりました」

 少子高齢化が進むなか、介護施設でも介護士不足で入浴介護の人手も将来的に足りなくなっていくことが予想されている。「介護される高齢者も介護する側にとっても、入浴の手間がかからず、安全で心地よい温浴施設のニーズは高まっていくはず」と笹野さんは予測する。

「私が将来、プロデュースしたいのは、ただ『入浴の手間がかからない』というだけでなく、それによって、五感を通して癒やされ、誰もが気持ちよく、健康にもなれるサウナ施設です」(笹野さん)

 サウナは依然、“男性のカルチャー”という意識がまだ根強い。「ととのう」という感覚もどこか男性視点で語られることが多い。笹野さんはサウナプロデュースにおいて、「女性の感覚」を大切にしたいという。

「女性の場合は、男性と体のつくりや筋肉量も違いますし、『ととのう』感覚もより個人差があって、デリケートです。男性に合わせたサウナ施設で、熱いサウナや冷たい水風呂を我慢するのではなく、女性も心から『気持ちいい』と思えるサウナがもっとあってもいい」(笹野さん)

 サウナは血流が高まることで肌の血色やツヤがよくなる美肌効果も感じやすい。美容効果への期待もあってか、昨今は女性人気も高まっているが、「サウナの最大のメリットは自律神経が整うこと」。自律神経が整うと、睡眠の質が高まり、寝つきや寝起きがよくなったり、からだの冷えや肩こりなどの不調が改善したりする。あわただしい日常に追われ、ストレスを抱えがちな現代女性にこそ、サウナはその効力を発揮するはずだと笹野さんはいう。

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女性たちが抱える不調が少しでも改善されたら