「最初に、サウナ設置予定の診療所の屋上を訪れたときに、吹き抜ける風の気持ちよさをすごく感じたんです。なので、この風が感じられるサウナにしたいと思っていました。それが『風SAUNA』の名前とコンセプトの由来です」(笹野さん)

 最初の依頼から1年半。完成した「風SAUNA」は、フィンランド式の貸し切り型プライベートサウナとなった。サウナ室それ自体が「風SAUNA」のシンボル的な存在となるような、特徴的なドーム型のテントサウナに仕立てた。サウナ室を囲むテント幕は不燃性のタープでつくられており、サウナ室内の空気が密閉されず、サウナ室内外の風が流れやすいつくり。

「まさに風を感じるサウナになりました。サウナ室の温度設定も約80度とそんなに熱すぎないので、息苦しさも感じにくい。不調を感じる方や高齢の方でも過ごしやすいと思います」(笹野さん)

 目指したのは、「しっかり熱いのに、出たくなくなるほど心地いい」という感覚だ。さらに、人間がストレスを感じにくいという“曲線”を生かした設計と、サウナ室内の湿度、空気の流れや調光、香りなどにもこだわった。自分で石に水をかけて蒸気を出す、人気の“ロウリュ”もできる。

 定員6人のプライベートサウナであることも、家族や友人同士など、気のおけない仲間だけで、自由なスタイルでサウナを楽しめるように、という配慮でもある。サウナ室で気兼ねなく横たわることもできるという。

 サウナドームを出ると、外気浴スペースとして、床と一体型の「ととのいデッキ」がある。デッキそのものをチェアと見立ててつくられた曲面デッキだ。この角度にもかなりこだわったという。

「ととのいデッキに寝そべったときに、頭の後ろの部分にあたる角度は、介護用のリハビリベッドをベースに考えました。榎本院長と薬剤師の方とともにかなり試行錯誤しながら角度を決めました」(笹野さん)

 デッキの木材には地元・宮崎県産のヒノキを使用。ととのいデッキは屋根のないオープンスペースにあるため、昼間は延岡の自然の景色を楽しめ、夜は星空や花火などを眺めながら、ととのうことができる。

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