映画「隣人X -疑惑の彼女-」は12月1日(金)、東京・新宿ピカデリー他全国ロードショー (c)2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会 (c)パリュスあや子/講談社

──今回の撮影の前後で、自身の変化はありましたか。

上野:私が演じた良子は、学歴もキャリアもあるのに、アルバイトをしてつつましく暮らすことを自ら選んでいるアラフォーの独身女性です。澤尚人監督がなぜ私にオファーをしてくださったかを間接的に聞いたのですが、「何かを判断する時、誰がこうとか、世の中がこうとかは考えず、自分の思いを持って動いているから」だったそうです。

 私は、自分がどう感じるかがすべてだと思っています。そして、人それぞれ感じ方は違うとも思っています。今回の作品を通して、それを改めて感じることができました。

役を自分に近づける

林:今回、熊澤監督とは15年ぶりにご一緒しました。17歳の時、監督から「役になろうとするんじゃなくて、役を自分に近づけるんだよ」と言われたことがあります。その後の俳優人生でも、同様のことを言われる機会があり、その意味を模索してきました。10代、20代は何にでもなれると思っていましたが、30代になると、その万能さに対して疑いを抱くようになってきて。俳優という職業は、人柄や生き方、日々何を考えているかなど、自分自身がにじみ出てしまうものです。「嘘がつけなくなる」と思っていた時、この熊澤監督からの言葉を思い出していました。そして今回の撮影を通して、その本質を体現しているのが樹里さんだと感じました。この映画を通して得られたことは大きかったです。

──映画では、周囲に流されず「心で見ること」の大切さも描かれていました。

上野:食事も情報も、摂取しすぎると毒になり得ると思います。でも、人は情報を多く得たがりますよね。その根底にあるのは「恐怖」なのではと思っています。恐怖に打ち勝つには、いったんすべてをシャットアウトして、自分の気持ちを聞くことが大切だと感じています。

林:今、樹里さんが言われたことにもつながるんですけど、最近では自分の本当の気持ちや声に目や耳を傾けて、心の中で「ちょっともう限界だよね」という考え方をするようになりました。

 僕は基本的に、どんなに疲れていたり、いらだったりしても、それを人に見せず、常に余裕がある人でありたいという思いがあります。でも、時にはこらえきれない場面にも直面します。そういう時でも、これまではグッと我慢するタイプでした。

 でも、「自分が思うことを相手に伝えた時、相手はどう思うだろう?」などと考えるように変わっていきました。その時は感情的になって考えられなかったとしても、後になって落ち着いた時に、振り返るようにしています。自分を大切にすることが、周りの人を大切にすることにもつながるのではと思います。

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