2位以降は神戸製鋼所や日本製鉄などの鉄鋼株が目立つ。これらはPBR(株価純資産倍率)と呼ばれる指標が1倍を割っているケースが多いことにも着目したそうだ。PBRは現在の株価をその企業の純粋な保有資産で割った数値で、1倍割れは株価が本来の実力(保有資産)よりも安いことを意味する。証券取引所はPBR1倍割れの上場企業に対し改善を求めている。
建設株も多いのはなぜ?
「配当利回りが高く、業績がよかったからです。今年の前半まで銀行株もたくさん持っていましたが、かなり値上がりしたので売却しました。フィデアホールディングス(荘内銀行と北都銀行の持ち株会社)やあおぞら銀行が残っていますけど」
まねして買うのはダメ
一方、米国株8銘柄は配当を気にせず保有中の有力企業。世界的な投資銀行のゴールドマン・サックスにおなじみのマクドナルド、鉄道のユニオン・パシフィック、日本人も大好きなスターバックス、電気通信のベライゾン、製薬のファイザー、スポーツ用品のナイキ。例外は同じく製薬のヴィアトリスで、ファイザーを保有していたら無償で分配された銘柄だそう。
幅広く業種が分散されている点を初心者も見習おう。似たような業界の銘柄ばかりに偏っていると、株価の動きまで似てしまい、リスクが分散されない。
ところで、テスタさんの保有銘柄をそのまままねして買えばいいという話では決してない。
「雑誌や動画などで紹介された銘柄を安直にそのまま買ってしまうのが一番ダメ。完全に他人の受け売りで、自分の思考が止まってしまっています。気になる銘柄があれば、自分でもちゃんと調べてみて、『これならイケそうだ』という理由を見つけて投資することが大切です。その結果、負けたら『なぜ負けたか』を考えて反省する。この繰り返しで練習してください」
投資ビギナーに向けて何か一言いうとしたら?
「調子に乗らないこと、かな。最初から儲かると、その手法が正しいと信じ込み、次のターンで負けがちです。たとえ1年ほど好調でも『ずっと勝てる』と思わないこと。株式投資はスポーツと似ていて、最初から上級者にはなれません。練習を重ねて慎重に増やしてほしい」
そう、長年テスタさんを取材しているためわかる。80億円稼いだトレーダーと言われる今でもテスタさんは慎重で、真剣だ。ならば、あなたも。(金融ジャーナリスト・大西洋平、編集部・中島晶子)
※AERA 2023年12月4日号より抜粋