
いろんな曲をカバーしていると、ポップスにはそれぞれの国ごとに特徴が表れると気がつきました。例えば、アメリカのポップスだと同じメロディーが何回も繰り返されることが多かったり、K-POPだとビートが強めだったり。J-POPにはドラマチックなサビが多いなど、その国ならではのコード進行というか、曲の構造があると思います。
J-POPの場合は歌詞も日本語だから、日本人の私には頭にサラッと入ってくるところもやっぱり好きです。母国語を聴くと落ち着くし、曲の背景にあるコンテクストもしっくりと理解できる。サザンの歌を聴いたときに目に浮かぶのは、ハワイやカリフォリニアのビーチではなく、日本の海なんですよね。
逆にいうと、日本語の歌詞だけでは海外の人たちにはなじみづらい部分があるかもしれません。J-POPは音楽性としてはグローバルな魅力が十分にあるのに、言葉の意味が伝わらないためにちょっともったいないなと思うときもあります。今、私はバイオリンを身近に感じてもらいたくて週2本くらいのペースでカバー演奏動画をYouTubeやインスタグラムにアップしていますが、時々英語の歌詞も付けているのは、J-POPの魅力を海外の人にも知ってもらいたいと思うから。こういう形でひっそりとですが、私なりに応援しています。
Q. 廣津留さんがよく聴く音楽は? 最近ハマっているものがあれば教えてください。
A. よく聴くのは、いつの時代もやっぱりaikoさん。Lo-Fiミュージックも聞きますね。ニューヨークにいた頃から常に何かしらの音楽をかけていて、そのときの気分や作業によって変えています。例えば、移動中は聴くことに集中できるのでaikoさんや宇多田ヒカルさん、椎名林檎さん、原稿を書くなどの仕事をしているときは歌詞が頭に入ってきてほしくないのでLo-Fi、「明日から海外なのにパッキングが終わってない!」なんてときや家の掃除をするときなどは、好きなミュージカルのサントラやB’zさんを流してノリノリでやる気を出しています(笑)。もちろん、自分のコンサートの準備としてタンゴやクラシックも聴いていますよ。
最近はアイスランド出身のシンガーソングライターLaufey(レイヴェイ)さんにもハマっています。チェロやピアノなどいろんな楽器を弾きながら歌も歌うマルチ・インストゥルメンタリスト(マルチ奏者)で、ジャズやポップスなどさまざまな要素がミックスされています。ニューヨークの友人に教えてもらい、心を落ち着けたい夜などにBGMとしてよく流しています。私にとって音楽は、J-POPを含めてジャンルに関係なく、昔も今も生活にかかせないものなんです。
構成/岩本恵美 衣装協力/BEAMS