だれもがスマホを持ち、休日にはモールに行く社会が戦争をどう受け止めるのか。それはかつての「軍国主義」のイメージとはかなり異なる。子ども向けのおもちゃ屋には戦車やドローンのぬいぐるみが並び、志願兵募集のポスターはゲームそっくりだ。プロパガンダとポップカルチャーが、現在のウクライナでは不可分に融合している。現代の「戦争」とは、きっとそういうものなのだろう。

 むろん、以上の観察はウクライナ市民が戦争の不条理に苦しんでいないことを意味しない。むしろ逆だ。現地で話を聞いた30代夫婦の「開戦後、ぼくたちには人生のプランがなくなってしまった」という言葉が重くのしかかっている。

 ウクライナの人々は戦時下でも「日常」を続けている。でもそれは本物ではない。彼らが真の日常を取り戻す日が一日も早いことを願いたい。

AERA 2023年12月4日号

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