留学し、今でも年に何度も訪れる米国ワシントンDCで。第二の故郷といってもいいかもしれない(撮影/ランハム裕子)
留学し、今でも年に何度も訪れる米国ワシントンDCで。第二の故郷といってもいいかもしれない(撮影/ランハム裕子)
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 NTTのチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト、松原実穂子。サイバーセキュリティについて分析、情報収集、発信し、世界を駆け回る。国際会議に登壇し、内外のメディアに登場。ウクライナ戦争や安保三文書の改定で時流に乗り、今や講演は年100回。華やかな活躍は、ストイックに努力を続けてきた結果だ。勉強を積み重ね、人の縁を大切にする。自分に投資し、チャンスは必ずものにする。安住しない向上心が今の地位へ導いた。

【写真】米国ワシントンDCのシンクタンクでのオンラインイベントで

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 今年1月13日の金曜日、米国ワシントンDCの財団。サイバーセキュリティをテーマにしたシンポジウムで、松原実穂子(まつばらみほこ・46)は、流暢(りゅうちょう)な英語で話し出した。

「安保三文書を含め、日本のサイバーセキュリティの取り組みを形作った出来事がこの2年の間に三つあった。一つ目の2021年5月に発生した米コロニアル・パイプライン社へのランサムウェア攻撃……」

 身ぶり手ぶりを豊かにまじえて、視線は泳ぐことなく聴衆の誰かを確実にとらえ、様子を見る。聴衆が自分の言うことに満足しているだろうか? 下を見てスマホをチェックしていないだろうか? もしそうであれば、話す内容を変える必要がある。プレゼンをするときには必ず、「聴衆と伴走するように」ていねいに反応を見て、相手の求めるものを提供するように心がける。

 この日は、別のシンクタンクでもイベントに出演。翌土曜日は日本メディアの取材対応、日曜日は朝からロサンゼルスに向かい、国際会議に登壇。火曜の夜に深夜便で再びDCへ。水木と日米メディアの取材、金曜日は日帰りのニューヨークで米メディアの取材。土曜の朝5時の便で日本へ。

 NTTの「チーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト」として日本はもちろん、グローバルなサイバーセキュリティ(CS)について情報を収集、分析して発信する。ウクライナ戦争、さらには安保三文書の改定でCSへの関心が高まったこの1年は特にひっぱりだこで、講演は年に約100回、22年は米国3回をはじめ、イスラエル、シンガポールなど海外に7回出張。文字どおり世界を駆け回る。ここまでに至ったのは、内外情勢の変化もあるが、「誰にもないキャリアを築きたい」と、ストイックに努力を続けてきた結果だ。

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