今回の物語の主人公は神木隆之介さん演じる敷島浩一という男。戦時中、特攻に向かうはずだったのに特攻に行けなかった。ずっとその罪悪感を背負っている男が、戦後、一人の女性と出会う。それが浜辺美波さん演じる大石典子という女性。典子は戦争の孤児である赤ちゃんを拾って育てようとしていた。そんな「家族」ではない3人が一緒に住み始めていく。疑似家族である3人が徐々に家族になっていく中で、ゴジラの恐怖が近づいてくる。
この家族の話が、物語の主軸にきているので、これが「壊されるかもしれない」という思いで見ていくことになる。
特攻できなかった男が、この疑似家族を守るために、ゴジラと戦うことを決意する。
うちの妻も一緒に見ていたのですが、妻は中盤からずっと泣いていました。それはきっと、この家族を守ろうとする気持ちに泣いたんだと思います。

終わらせたいという気持ち
8歳の息子と妻と僕と3人で見たこのゴジラは、息子は「エグくて怖くて面白かった」と言い、妻は「いや、怖かったし、泣けた」と。そして僕も「怖い! ゴジラがとにかく怖い」という思いと家族を守ろうとする敷島にも泣けたし、なにより、特攻に行けずに自分の中での戦争が終わってない敷島が自分の中での戦争を終わらせたいという気持ち。
来年の3月いっぱいで放送作家業を辞めると決めた僕は今、32年間の感謝の思いを込めて、やれることをとことんやろうと決めているのですが、自分の中で「終わらせる」から「次に進める」と思っていて。そんな気持ちが被ってかなり泣いてしまった。
そして、監督含めてスタッフの皆さんが熱い思いを持って「絶対におもしろいゴジラを作ってやるぞ」という気迫が凄い。クレジットの中には阿部秀司さんという、生き方がとても格好いい人生の大先輩の名前も出ていて、やっぱりな、と納得。
このタイミングでこの映画を見られたことに深く深く感謝です。
家族で見ることをおすすめします。
■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)、長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)が好評発売中。漫画原作も多数で、ラブホラー漫画「お化けと風鈴」は、毎週金曜更新で自身のインスタグラムで公開、またLINE漫画でも連載中。「インフル怨サー。 ~顔を焼かれた私が復讐を誓った日~」は各種主要電子書店で販売中。コミック「ティラノ部長」(マガジンマウス)が発売中