生方 (笑)。私は今日、製本された4話の台本を初めて受け取りました。フォトグラファーの市橋織江さん撮影のお花の写真がカバーになっていて、かわいいですね。

松下 本当にそうですよね。とてもおしゃれです。僕は台本を初めて読んだ時に、なんて素敵なんだろう、と。「早く覚えたい」という気持ちになりました。

生方 ありがとうございます。

松下 セリフを覚えることが仕事ではあるのですが、時にどうしても覚えられないセリフがあったり、物理的に入りにくかったりして、覚えるのがつらい時があります。そうなってくると結構怖くて……。せっかく脚本家の方が書いてくださったセリフを機械的にただしゃべるだけになってしまうのがつらいし、悔しい気持ちになります。

生方 ああ、なるほど。

松下 その場は乗り切れても、すごく消化不良だし、家に帰ってからすごくモヤモヤするんですよね。だから「早く覚えたい」という気持ちは僕にとってすごく幸せです。生方さんの脚本には、ここはどんな感じで言おうかな、と想像して楽しむことができる言葉たちが綴られています。全ての登場人物のセリフが本当にかわいくて。このセリフを多部未華子さんはどんな風に言うのかな、神尾楓珠くんはどんな顔で言うのかな、と想像している時間も楽しい。そんな素敵な本です。

生方 ありがとうございます。他の脚本家さんの台本を読んでいると、自分の書くセリフは覚えにくいんだろうなと思うことがあるんです。松下さんはそういうこと、ありますか? 覚えやすい台本と覚えにくい台本。

松下 んー……、なくはないかもしれませんが、結局は自分の中で消化できて、腑に落ちているかどうか、だと思います。それは人それぞれで、100人いたら100通りの正解があるものだと思います。脚本家が使う言葉と自分との相性もあると思います。そういう意味で、僕は生方さんが綴られている言葉を早く覚えたくて、どんどん読み進めています。

生方 うれしいです。先日、共演者の皆さんと初顔合わせをされたんですよね? 村瀬さんから写真を見せてもらいました。

松下 はい。僕、多部さん、神尾くんともに初めましてだったので人見知り大爆発でした(笑)。でも、多部さんが「この3人ならば大丈夫だという確信が持てた」とおっしゃってくれました。

生方 じゃあ、大丈夫ですね!

(編集部・古田真梨子)

※AERA 2023年10月2日号

※生方美久さんとの対談は、第1回「10月2日号」、第2回「10月9日増大号」、第3回「10月16日号」、第4回「10月23日号」に掲載しています。

著者プロフィールを見る
古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

古田真梨子の記事一覧はこちら