2013年に共著『天職』(朝日新書)を出版。秋元さんは「死ぬ時にやりかけの仕事があるのが美しいと思っている」。鈴木さんは「50代をどう生きるかをずっと考えていた、自分なりの答え」(撮影/写真映像部・上田泰世)
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 日本のエンタメ界のトップを走ってきた秋元康さんと鈴木おさむさん。ただ、鈴木さんは、来年3月で放送作家をやめると宣言した。なぜ決断したのか。AERA 2023年11月20日号より。

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鈴木おさむ(以下、鈴木):お久しぶりです。

秋元康(以下、秋元):放送作家をやめる、と話題になってるね。

鈴木:今51歳ですけど、48歳の時にふと思ったんですよね。ただ、ちょうどコロナ禍で、やめることを言うタイミングでもなくなってきて、今年になりました。55歳になると60歳が見えて難しいかもしれないけど、今なら別の道に間に合うのかなと。「引退」と言われることもあるんですけど、それはちょっと恥ずかしいんですよね。素人のおじさんになるだけですから。

秋元 康(あきもと・やすし、左):1958年、東京都生まれ。高校在学中に放送作家デビュー。「川の流れのように」など作詞。AKB48総合プロデューサー/鈴木おさむ(すずき・おさむ):1972年、千葉県生まれ。19歳で放送作家デビュー。フジテレビ系「SMAP×SMAP」などの構成を手がけた(撮影/写真映像部・上田泰世)

ジョン・レノンと近い

秋元:「引退」というと特殊なところから降りるイメージがあるけど、「素人のおじさん」になるというのがいいよね。新しい指標だよ。僕たちの世代にとっては、ジョン・レノンが育休を取って子どものために仕事を休んだことを、かっこいいな、と思ったのに近いものがある。ただ、おさむは、新しくて面白いことを見つけたらそっちにいってしまうんだろうな、とは思ってたな。

鈴木:そうなんですね! ただ、やりたいことが明確にあるというよりも、今やっていることを単純に「やめる」と線をひいたということです。

秋元:なるほどなあ。定年退職後に目標がなくなってしまう人もいるけど、おさむ的な素人のおじさんになれたらいいよね。

鈴木:はい、そうなれたらいいなと思ってます。昨年、僕の師匠の前田昌平さんが亡くなりました。納骨堂で拝ませていただいて、自分の今いるところについて考えました。

秋元:今まで大切にしてきたものを整理したくなるんだよね。お世話になった人や仲間が亡くなると、いろいろ考えるよね。

鈴木:そうですよね。

 2016年、SMAPが解散しました。僕は20年以上、彼らの巨大な船に乗っていたけど、その船が突然なくなってしまった。その後も多くの仕事をいただいて、やりがいもありましたけど、自分の中にこれまでほどの緊張感がなくなってしまって、アドレナリンが出づらくなって息苦しくて。嫌なところもたくさん見たせいもあるのかもしれないですね。諦めもついたというか。

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