米のZ世代の変化
池上:パレスチナ問題に話を移しましょうか。イスラエルのネタニヤフ政権はまさに極右でポピュリストですね。ヨルダン川西岸は元々オスロ合意でパレスチナ自治区になっていた場所でした。そこにユダヤ人が勝手に入り込んで入植地を作ってしまった。ネタニヤフ政権はイスラエル国民を守るためという建前で軍隊を送り込んだ。なかなか報道されないのですが、あの地域ではユダヤ人たちがパレスチナ人たちに何度も暴力を振るってきたのです。それはパレスチナ人だって怒るわけで、その結果が現在の惨状です。
一方で興味深いのは、アメリカではZ世代が意外にイスラエルに肩入れしないことです。ここには新しさがありますね。
斎藤:『人新世の「資本論」』でも書きましたが、確かにアメリカの価値観は若い世代を中心に変わり始めています。環境破壊や格差問題が深刻化する社会に生まれ育ったアメリカのZ世代は資本主義の未来に希望を見いださなくなっている。彼女ら・彼らが目の前の問題をきっかけに勉強しているうちにBlack Lives Matterや#MeTooのムーブメントが起こり、感性が確実に変わった。だからこそパレスチナの惨状を見て、どう見ても彼らの方がかわいそうだとはっきりと言えるわけです。
ところがバイデンのような高齢者は、ロシアとウクライナの戦争ではロシアを民主主義の脅威だと批判していたのに、今度はイスラエルの側につこうとしている。そうした動きがZ世代の間に大きな失望を生み出しているわけです。
アメリカのダブルスタンダードはグローバルノースとサウスの間の溝を深めるでしょう。グローバル化の終焉はウクライナの戦争で極まりましたが、今回のパレスチナでの武力衝突で決定的になるのでしょう。
リベラル左派は20世紀的な時代が終わりを迎え、新しい時代に入ったという認識の転換をしないといけません。これまでの中道的な改革路線が有効性を失っている以上、極右勢力に対抗するためには、左派も新しいラディカルなヴィジョンを打ち出していく必要があります。極右がストーリーを作っているのに対して、左派は何もできていないのが現状です。
池上:フランスではマクロンよりマリーヌ・ルペンの方が支持が上回ったらしいですから。すごい時代ですよ。