フランス取材では、モネの終のすみかジヴェルニーの「水の庭」も訪れた。モネはここでいくつもの「睡蓮」を描き続けた(写真:フジテレビ提供)

 モネの絵はスッと心に入ってきますよね。まるで綺麗な景色を見ているのと同じような感覚で、心がかき乱されることがない。それも、モネが時代を超えて多くの人に愛される理由なのかもしれません。

――芳根さん自身は、美術に詳しいわけでは決してなかった。むしろ「アートはハードルが高いもの」という刷り込みがあったという。

芳根:学生時代の美術の授業は、一種の暗記もののような側面があり純粋に「面白い」とは思えなかったんです。一度深く入り込んでみれば奥が深いのはわかっていましたが、どのように近づいていいのかわからず、ただただ「ハードルが高い」と感じていました。

モネが育った街、ル・アーヴルの日の出。モネはここで《印象・日の出》などを描いた(写真:フジテレビ提供)

 ナビゲーターと音声ガイドを務めるお仕事をいただいたことで、私は「生で観ること」の面白さを知ったので、それは声を大にして伝えたいことでもあります。資料として見るのと、本物を生で観るのとはまったくの別物。《ウォータールー橋、曇り》《ウォータールー橋、ロンドン、夕暮れ》《ウォータールー橋、ロンドン、日没》という連作がありますが、自分の視界のなかに、異なる時間帯に同じ場所で描かれた三つの絵があるってすごく贅沢なこと。

 近くで観ると荒々しくダイナミックに描かれているように思えても、少し離れて観るとそうした筆遣いも馴染んでいて、「一種のトリックアートだね」とスタッフさんとも話していました。自分が動けば、絵が変わって見える。それも、モネの作品の面白さだなって思います。

(構成/ライター・古谷ゆう子)

AERA 2023年11月20日号より抜粋

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