開催中の展覧会「モネ 連作の情景」で、ナビゲーターと音声ガイドを務める芳根京子さん。彼女にとって、モネはどんな存在となったのか。AERA 2023年11月20日号より。
* * *
――「モネ 連作の情景」には、国内外から《睡蓮》《昼食》《積みわら》《ルーヴル河岸》など代表作60点以上が展示されている。モネの作品だけを集めた“100%モネ”の展覧会だ。
優しい色遣い、柔らかなタッチ、穏やかな光の表現など、モネ特有の作風のなかで、芳根さんが最も心惹かれているのは、どのような要素なのだろう。
芳根京子(以下、芳根):実際にフランスに行き、モネの人柄や抱えていた葛藤といった内面を知ったことで、作品の見方や受け取り方が変わってきたように思います。作品が持つ奥行きや広がりをより一層感じられるようになったことで「アートって、面白い」と強く感じるようになりました。
フランスでも様々な美術館を回り、モネの絵を観ましたが、日本での展示が始まり改めて作品を観ると「やっぱり光が美しいな」と。
モネの絵を意識して観るようになってからは常々「光の人だ」とは感じていましたが、その人間性を知り、色々な考えが自分のなかに芽生え、一周回って「やっぱり光の人なのだな」という思いに至りました。
《チャリング・クロス橋、テムズ川》という作品にしても、絵なのにどこか眩しく、心に染みる。純粋に「美しいな」と感じます。
心が穏やかになる
――“印象派”の代表的な画家と言われるだけあり、主張が強いわけでなく、抽象度の高い風景画が多いのもモネの作品の特徴だ。
芳根:実際にモネが描いた場所をいくつか訪れたのですが、言ってしまえば、本当になんてことのない場所も多いんです。「モネの庭」として知られる、ジヴェルニーにも行きましたが、決して派手ではないんですよね。
まさに「静の美」であり、それがすごく心地よかった。華やかで美しいものは沢山あるけれど、「心が穏やかになる」ってこういうものなのだな、と感じました。人々が目に留めることのない、スルーしてしまいがちな場所も、モネが切り取ることで魅力的に描かれるようになる。それだけ、日々小さな幸せを見つけられるということでもあるので、羨ましくもあります。