11月上旬、紀平梨花は自身のインスタグラムのストーリーに、トレーニングに励む自らの姿をアップしている。そこから伝わるのは、試合のリンクに上がれない今も、地道に新たな力を蓄えようとする強い意志だ。
2018年グランプリファイナルで優勝、2019・20年四大陸選手権を連覇している紀平は、当時は圧倒的な強さを誇っていたロシア女子に匹敵する高難度ジャンプを持つ数少ないスケーターだった。紀平は2017年ジュニアグランプリファイナルで女子としては世界で初めてトリプルアクセル―3回転トウループを決め、2020年全日本選手権では4回転サルコウを成功させている(国内大会のため国際スケート連盟非公認)。
2022年北京五輪でも活躍が期待されていたが、2021年7月、右足首に痛みを感じる。後に右距骨疲労骨折と診断され、北京五輪代表選考会となる2021年12月の全日本選手権は欠場を余儀なくされた。
昨季は2022年9月の中部選手権で復帰し、グランプリシリーズ2試合に出場して少しずつジャンプの難度を上げていたが、それも怪我と付き合いながらの道程だった。2022年12月の全日本選手権ではフリーの時にシーズンを通して一番の痛みを感じたといい、本来の力を出し切れず11位に終わっている。大切な試合である全日本だからこそ、患部への負担も大きくなったのだろう。
そして今季、紀平は試合に出場せず怪我の完治を目指す道を選んだ。全日本選手権に進出するためには出場が必須となる9月の中部選手権に出場せず、10月のスケートカナダも欠場することを決断。10月20日には自身のSNSに動画をアップし、その中で次のように語っている。
「今シーズンですが、コーチ、トレーナーさん、お医者様とミーティングを重ね、試合に出場しないで、怪我の完治を優先することを決断しました。ですが今現在トロントにて、トレーニング、そして治療に励んでいます。来シーズンは、健康、そしてパフォーマンスも完全復活を目指して、全力で毎日頑張っていきたいなというふうに思っております」(紀平梨花X[旧ツイッター]より)