※写真はイメージです(写真/Getty Images)

児童精神科医が少ない中、発達障害の疑いで受診したくても予約がいっぱいで初診まで何カ月も待たなければならないような事態が起きている。発達障害の診断は難しいものなのか? 子どものこころ専門医で、愛育クリニック(東京都港区)の小児精神保健科部長を務める小平雅基医師に取材した。前編・後編の2回に分けてお届けする。

【グラフ】児童精神科外来を受診した子どもの疾患はこちら 発達障害が53%で最も多い

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――発達障害は「病気」ではないのでしょうか?

 発達障害を長年診ている医師であれば、一般の人が考えるいわゆる「病気」とは思っていないように思います。発達障害は「その人が持って生まれた認知・能力特性の偏りによって生じる生きづらさ」の問題です。社会生活をしていく上で必要となる何らかの能力に偏りがあって平均的な能力の人に比べて、適応に困難を要する状態を指します。能力の偏りなので、結局は「程度」が問題になりますし、「程度」を前提にしているため「スペクトラム」という概念が登場してきます。

 パソコン(PC)で言えば、メモリーとかCPUといったさまざまな機能がある中で、ある特定の機能が平均よりもスペック的に低いために、特定の作業をする際にうまくいかないことがあるようなイメージでしょうか。もちろん特定の機能のスペックが低くても、問題なく作業をこなせる場合もあるわけです。一方、いわゆる「病気」のイメージは、スペック的な問題というよりも、PCに故障が起きてきたようなイメージかと思います。ただし、PCでもスペック的な偏りが理解されないまま使用されれば故障が起きてくるように、発達障害特性が強い子どもも正しく理解されないと、心身の不調(いわゆる二次障害)が起きてきやすいとも言えます。基本的に発達障害特性は、先天的な要素が中心にあり、環境など後天的な要素はそれに比べると低めに考えられています。

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発達障害を診断するのは難しい?