11月6日、弾道ミサイルからの避難訓練で地下鉄駅構内に逃げ込んだ参加者たち。かがみ込んで頭を守った

「いざミサイルが飛んで来たとき、訓練の経験がなければ、パニックを起こすばかりで冷静に対応できません。『想定外でした』などという言い訳は、許されない。実際、台湾や韓国では、隣国からの攻撃を想定した避難訓練が定期的に行われています。日本でも、地震に対しては市民がその場でいっせいに身をかがめて頭を守る“シェイクアウト訓練”が行われますが、避難行動を含め、それが全国一斉に行われるイメージです」

頭を守り体の表面積を小さく

「ミサイル攻撃に対して頭を抱えて座り込むなんて意味があるのか?」といぶかしむ声もあるが、「地下施設に逃げて体を小さく丸めることは、自分の身を自分で守る最高レベルの行動であり、訓練していないとできない」と、田邉氏は言う。

「国は、既存の施設を避難所にする方針のため、堅牢な避難施設を作る動きはありません。核シェルターの普及率を見ると、スイスとイスラエルは国民の100%、アメリカは82%を収容できるのに対し、日本はわずか0.02%。そうなると、地下鉄の駅というのが、現状最も有効な避難先の一つになります。避難したら、上からがれきが落ちてくる場合に備えて、地震の時と同じように一番の急所である頭を守りつつ、手足を挟まれないようとにかく体の表面積を小さくしてください」

ノドンなら地下を目指せ

 北朝鮮が日本に向けて発射するとしたら、「ノドン」と呼ばれる準中距離弾道ミサイルの可能性が高い。ノドンは地表付近で爆発し、地中への貫徹力は小さいので、地下にいれば高確率で助かるという。また、核弾頭が載せられた最悪のパターンでも、汚染された空気がある程度遮断される地下に1~2日とどまっていれば、その間に地上の放射線量は大幅に下がる。核シェルターがなくても、地下空間をうまく活用できれば、生き残る可能性を高められるのだ。

 とはいえ、日本の地下鉄の駅は、旧ソ連諸国のように避難所機能を念頭に設計されたものではないため、逃げこむ場合にはいくつか注意点がある。

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