11月6日、東京・練馬区で緊急一時避難施設である駅を使い、弾道ミサイルからの避難訓練が行われた。事前にレクチャーを受ける参加者
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 11月6日、都営地下鉄練馬駅周辺で、弾道ミサイルの飛来を想定した避難訓練が行われた。しかし、駅前では市民団体が「戦争をあおる訓練をやめろ!」などと抗議の声をあげ、SNSでは「ミサイル攻撃に備え頭を抱えて座り込むなんて、竹槍で戦えと同レベルで意味がない」「訓練は茶番だ」といった冷笑的なコメントが相次いだ。軍事の専門家は、この訓練をどう見るのか。陸上自衛隊の陸将や、東京都危機管理監の経歴を持つ田邉揮司良(きしろう)氏に、見解を聞いた。

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 政府は今年度、海外からの武力攻撃などを想定した「国民保護訓練」を、過去最多の計67回予定している。今回の練馬駅周辺での訓練もその一つだ。

 練馬駅舎は、ミサイル攻撃による爆風など、直接的な被害を軽減するための「緊急一時避難施設」に指定されている。都内で同施設を使った訓練が行われるのは初めてといい、その背景について、田邉氏はこう説明する。

「東京を火の海にするぞ」

「近年、北朝鮮の弾道ミサイル発射が相次いでおり、昨年は中国が発射した弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に落ちる事例も発生している。東京にいると現実的な危機感は持ちにくいかもしれませんが、北海道や沖縄ではJアラートが実際に鳴り、避難を指示されています。また、北朝鮮は過去に、『東京を火の海にするぞ』という脅迫をしている。ウクライナ戦争を見ても首都が狙われやすいことは明らかで、今後、都内での訓練は増えていくと思います」

 田邉氏は2018年、文京区の東京ドームシティ周辺で行われたミサイルを想定した避難訓練に、東京都危機管理監として携わった。当時も現場近くでは、「戦争をあおるな!」と、訓練への反対運動があり、警察が警備にあたっていたという。

「何事も、すべての人が賛成してくれることなどあり得ない」。田邉氏は、そう批判を受け止めつつも、「あおっているのではなく、万一に備えているんです」と、訓練の意義を強調する。

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