―― こうした状況はどのくらい続くのでしょうか。
エサがないということは、冬眠も間近だと考えることができます。今までの経験では、エサの少ない年は早い時期に姿が見えなくなります。エサがないのにウロウロしていると体力を消耗するのも早く、動けなくなってしまいますから。反対に、エサが多い年は正月すぎまで冬眠せずに活動しています。
山の中に木の実がなっていないということは、実際に見てみれば分かります。だから猟をしようと思って山へ行っても、今は無駄足なのかなって思います。
雪が降ってくると、足あとを追ってクマを探す「忍び猟」をします。でも今年は雪もまだ降っていません。強い霜でさえ、まだ降りていません。今日(11月2日)だって半袖です。それでも寒くない。雪が降ってくるのを待っている状態ですね。雪がないとクマの痕跡も分かりませんから。
―― 自治体から相談などは寄せられているのですか。
(クマに襲われる事故は)毎日のように起きています。そのたびに「捕獲してほしい」という要望はあるのですが、でもマタギだからといって、どこでも銃を撃てるわけではありません。線路越しに撃たなければならないだとか、道路越しに撃つとか、民家からどれくらい離れているかとか(銃を扱うのには)法律などで非常に厳しく決められています。ちょっと間違えただけで大変なことになりますから。だから難しい面があります。
仮に街中に出てきたり、人が襲われたりしている場面に出くわしても、マタギは追い出すことはできても、そこで発砲はできない。そこは非常に気をつけています。
(AERAdot.編集部・池田正史)