鈴木さんは、秋田県北秋田市のマタギ資料館でマタギの歴史や文化を語り継いでいる。例年は雪が降りだしたら「忍び猟」をするという=マタギ資料館提供
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 今年は全国でクマに襲われるケースが相次いでいる。秋田県北秋田市の阿仁(あに)地区でクマの狩猟をする「マタギ」を約60年続けてきた鈴木英雄さん(75)も、「今年は異常」だと漏らす。鈴木さんの目には今年のクマはどう見えているのか、クマと出会った時の対処法はあるのか。

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――今年のクマはいつもとどう違いますか。

 普段であればクマがどんな時に攻撃してくるか、これまでの経験からある程度予測がつくものです。山の中では人と出会っても、むやみに人を襲うようなことはありません。むしろクマは人を避けて隠れようとします。

 ところが今年は異常です。クリ拾いや散歩をしていたら、突然襲われるケースもあります。普通ならいないはずのところから急に出てきたりします。私たちが知っているものとはかけ離れていますね。

 こちらのほうは街中といっても、周りは広葉樹というか、雑草というか、(人が住んでいるところの)近場でも藪や茂みの陰などクマが隠れられる場所はたくさんあります。普通なら人がいれば姿を見せません。出てくるとしても人のいない時間帯に動く。クマは本当に敏感だし、頭もよくて、動きも素早い。人の気配を感じたら、すぐに避けるように行動します。

 今は時間に関係なく、朝方や夕方にも人前に出てきます。朝一番でシャッターを開けたらクマがいた、なんてこともあります。田んぼや線路脇といった、すぐ近くにも姿を現します。今年はたくさんクマの写真が撮れました。今までは撮ろうと思っても全然撮れなかった。

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