「ドリル優子」こと小渕優子選対委員長。10月23日、自民党役員会に向かう
「イソジン吉村」こと大阪府・吉村洋文知事。10月13日、報道陣の囲み取材で

 それでも、総理にあだ名をつけられるような空気があることは、まだ少し健全な社会なのだとは思いたい。パソコンのハードディスクがドリルで壊されちゃっていた小渕優子さんを「ドリル優子」と名付けたり、「うがい薬でコロナ対策ができる」と大風呂敷広げちゃった大阪府の吉村知事を「イソジン吉村」と嗤ったりとか……嘘でしょ!?  というようなことをしでかす政治家にはどんどん面白いあだ名をつけて、ちゃかすのは大切な民主主義だ。今にして思えば、安倍さんのときは、“総理様”にあだ名をつけるような雰囲気すらなかった。最後のほうに「アベノマスク」くらいは言えても、最も安倍さんが力を振るい続け、モリカケ問題で政治への信頼を根本的に失うような疑惑が起きたところで、言論はどこか抑圧的だった。笑っていてもどこか暗い安倍さんに呑まれるように、陰鬱で抑圧的な空気が社会を支配していたのかもしれない。

 ずいぶん前のことだが、田中真紀子さんが週刊朝日のインタビューで、「回し車をからからと一生懸命走るけど、全然前に進まない。安倍さんはハツカネズミみたい」と安倍さんについて語っていたが、全く定着はしなかった。安倍さんって、実は小物なのではないか、実は焦っているのではないか、一生懸命だけど空回りだよね……とみんなわかっていたけれど、安倍さんのことを嗤ったら、その数千倍で憎まれるような緊迫感があったからだろう。  

 一方、岸田さんには、その手の怖さは感じない。ただ岸田さんは何もしない。小さなノートに「国民の声をかきとめてきた!」といばれちゃうくらいに傲慢なくせに、何もしない。

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