中村胤夫(なかむら・たねお)/1936年生まれ。三越(現三越伊勢丹)の社長・会長を歴任。2004年から「名橋『日本橋』保存会」の会長を務める(撮影/写真映像部・高野楓菜)
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 東京では大規模な再開発が進行している。中央区の日本橋エリアもその一つだ。首都高速道路の地下化で、日本橋に空が戻ってくる。AERA 2023年11月13日号より。

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 東京の近未来を展望する上で欠かせないのが日本橋エリアだ。首都高速道路の地下化に伴い2040年に高架が撤去され、77年ぶりに日本橋から空を仰げるようになる。さらに、東京駅の日本橋口近くには日本一の高さとなる超高層ビル「トーチタワー」(390メートル)が28年3月完成に向け建設が進む。

 日本橋川上空を走る首都高都心環状線は1964年の東京五輪を翌年に控えた63年に開通。以来、日本橋を含む日本橋川の上を首都高の高架が覆ってきた。転機は2016年。日本橋川沿いの3地区が国家戦略特区の都市再生プロジェクトに追加された。これを機に、日本橋周辺のまちづくりと首都高地下化の検討が進み、神田橋JCT~江戸橋JCT間の全長1.8キロの地下ルート化が決まった。これに伴い、日本橋の川沿いには約1.2キロの親水空間が誕生し、日本橋川の景観は一変する。

「川と街のつながりを生み、育んでいきたい」と意気込むのは、日本橋一丁目の「中地区」の再開発を担う三井不動産だ。首都高の高架撤去を考慮した、「川に顔を向けた」まちづくりを計画している。

 2026年3月に完成予定の再開発エリアには、オフィスや国際会議場・展示場(MICE施設)が新設される。これらの施設は屋外テラスやデッキを川側に設けるほか、川沿いに広場や遊歩道を整備して親水空間を確保する。日本橋川沿いに立つ1930年築の日本橋野村ビル旧館(中央区指定有形文化財)の保存も決まっており、歴史や文化の厚みが漂う日本橋エリアにふさわしい街並みの維持に努めるという。

日本橋覆う首都高撤去

「川」が主役になることで舟運の発展も期待されている。

「首都高の地下化が実現すれば、川沿いの地区は青空と水辺が一体的に広がる魅力的な空間になると見込んでいます。舟運も今まで以上に活性化され、『川から臨む』機会も増えると思います。日本橋野村ビル旧館や新設される高層棟など、川面からは再開発後の変化に富んだ川沿いの景色を楽しむことができるはずです。日本橋川を通じて、『見る、見られる』の関係性が築けると思っています」(同社ビルディング本部)

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