イメージ写真
※写真はイメージです(Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

 アメリカの文化人類学者ジェイムズ・クリフォードは著書『ルーツ』の中で、「旅」は人の暮らしの付け足しではなく、個人を形づくるのに欠かせない要素だという視点を提起した。朝日新聞記者・玉置太郎氏は同書を引用しつつ、「『外国人』や『移民』に対して、顔と名前と人柄を知ったひとりの人間として向き合うことで意識の中で前景化されるのは、ルーツ(roots)=「起源」ではなく、その人がたどってきたルーツ(routes)=「経路」だ」と言う。同氏は、移民の子どもの学習支援をする大阪・ミナミの「Minamiこども教室」でボランティアをしながら、さまざまな移民の声に耳を傾けてきた。同氏の新著『移民の子どもの隣に座る 大阪・ミナミの「教室」から』(朝日新聞出版)から一部を抜粋、再編集し、排他的な日本社会の中で、自分のルーツを肯定的にとらえられない移民たちの姿を紹介する。

【写真】主要7か国の難民認定率はこちら

*  *  *

 ある社会におけるマジョリティは常に、移民たちが「どこから来たのか」(ルーツ=roots=起源)を問い、「ここに属する私たち」なのか、「よそから来た他者」なのか、という区分けを最優先の問題とする。その問いの先では、起源の異なる他者が社会に持ち込む「違い」を、取りのぞくべき疎ましいものと捉えてしまいがちだ。
 

次のページ
移民のルーツ”経路”をもつ子ども