新社長就任を辞退したと報じられた東山紀之氏(撮影/写真映像部・松永卓也)

権力の集中は業界全体の課題

二本樹:私は、ジャニーズ問題の本質は「権力の集中」だと思っております。再発防止特別チームの提言の中でも、ジャニー氏、メリー氏に権力が集中していたこと、ワンマン営業、同族経営の問題も指摘されていました。そうした状況の中でジャニー社長やメリー副社長に誰も意見を言えない状況が生み出されて、そこから何をやっても構わないんだという風潮が生まれたんだと思います。権力は健全な形で分散されていくべきだと思います。

佐藤:なぜ性加害が起き続けてしまったのか。その原因の一つはメディアです。テレビ局が、芸能事務所に忖度をせずにタレントのキャスティングをすることができれば、干されるということもなく、性被害にあった芸能人が声を上げやすい状況を作ることもできたのではないか、と考えています。今、各テレビ局はジャニーズ問題について検証しているという体を取っています。しかし、これはジャニーズ事務所だけの問題ではなくて、芸能業界全体の問題です。今のメディアを見ていると、ジャニーズ事務所をとかげの尻尾切りにしようとしているように見えます。テレビ局を含めたメディアの検証はまだ不十分ですし、ネットメディアも含めて、メディアがまだまだ逃げていると感じています。

松谷:おっしゃるとおり、業界全体の問題ですね。ジャニーズ事務所だけでなく、音楽系の会社や、出版社など、さまざまな構造全体が今回の被害を引き起こしてしまったわけです。もしジャニー氏に性加害をされたとしても、すぐに辞めてほかの芸能プロダクションに移籍をできればここまで被害は拡大しなかったし、ジャニー氏はそのとき糾弾されていたはずです。ただそれができない構造があった。これを業界全体でつくり上げてしまったんですよね。

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行政は芸能界と政治家に忖度