もちろん落馬でこの世を去ったのは日本人ジョッキーに限らない。アメリカでは1940年にリーディングジョッキーに輝いたアール・デュー騎手が、翌41年1月にその表彰式で祝福された直後のレースで落馬。搬送中の救急車の中で帰らぬ人となった。
大恐慌時代の1930年代初頭にアメリカでアイドルホースとなり、映画化もされたシービスケットの相棒として知られた「アイスマン」ことジョージ・ウルフ騎手も、伝説となったシービスケットと三冠馬ウォーアドミラルのマッチレースから8年後の1946年にに落馬して35歳の若さで死亡した。
最近ではオーストラリアで通算1000勝以上を挙げたディーン・ホランド騎手が今年4月に落馬して命を落とした。奇しくも3月のG1ニューマーケットハンデキャップでは、落馬負傷した騎手からの乗り替わりで13年ぶりのG1制覇を果たしたばかりだった。
死亡まで至らなかったケースでも落馬事故で重傷を負ったり、検量時に蹴られたり、ゲート内で馬が暴れたことで騎手がケガをしたりするケースは枚挙にいとまがない。競馬ファンとしては騎手という職業が危険と隣り合わせのプロフェッショナルだということを忘れず、常に敬意を持って応援していく気持ちを忘れぬようにしたい。(文・杉山貴宏)