先日は武豊が負傷するなど危険も伴う騎手という仕事

 世界ランキング1位のイクイノックスが衝撃的な圧勝を見せて幕を閉じた今年の天皇賞(秋)。前年のダービーではそのイクイノックスを2着に下して優勝したドウデュースはその対抗格と見られていたが、レース前に主戦の武豊騎手が負傷して乗り替わりとなる不運もあって7着に終わった。

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 武騎手は天皇賞当日の新馬戦後に騎乗馬の腹帯を取ろうとした時に右太ももを蹴られてしまった。骨折などの重傷には至らなかったものの当日の騎乗を続けるのは不可能だったという。

 騎手といえば馬と接するプロフェッショナルだが、それでも馬に蹴られてケガをするというニュースはしばしば聞かれる。2014年には藤岡佑介騎手が検量室前で騎乗馬ではない馬に頭部を蹴られ、脳しんとうなどのため当日の乗り替わりを余儀なくされた。

 松岡正海騎手も2019年に騎乗予定だった馬に蹴られて右尺骨骨折の重傷を負った。海外でもレース前や、レース中の落馬後に蹴られ、重傷を負ったというケースも珍しくない。

 幸いにも上記の騎手たちは命に別状はなかったが、落馬事故ともなると最悪の事態に至るケースはままある。日本でも多くの騎手が命を落としており、中でも有名なのは岡潤一郎騎手の事故だろう。

 1988年にデビューした岡騎手はこの年のJRA最優秀新人賞を獲得。翌年には騎乗機会5連勝の離れ業を見せるなど天才肌のジョッキーとして名を馳せた。90年の宝塚記念では一世を風靡していたオグリキャップに騎乗(結果は2着)。同年のエリザベス女王杯をリンデンリリーで制してG1初勝利を手にしている。

 しかし93年1月の新馬戦で馬の故障により落馬。衝撃でヘルメットがずれた頭部を後続馬に蹴られてしまった。懸命の治療も実らず、2月に24歳で死去。「武豊のライバルになり得る」とも称された若き天才の早すぎる死だった。

 2004年3月には竹本貴志騎手がデビューから約3週間に落馬による脳挫傷で死亡。15戦1勝の成績を残し、20歳の若さでこの世を去ってしまった。22年8月には17年にニュージーランドで騎手デビューし、重賞2勝を含む通算162勝を挙げた柳田泰己騎手が落馬で命を落としている。

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海外でも悲劇的なアクシデント