「NPBでの実績に加えて、現役引退後には筑波大学大学院でスポーツ生理学を学んだ。今でも最先端の情報を勉強し続けており説得力がある。工藤氏自身が現役時代に感じた指導方法への違和感、不満をなくすために行なっていることだともいう。選手からしても信じてついていけば何とかなると思える人物」(元西武担当記者)

 監督就任1年目の秋季キャンプでは当時若手だった千賀滉大(メッツ)や東浜巨などを徹底的に鍛え上げた。また野手の中心として期待した柳田悠岐に対して厳しい声をかけるのも日常だった。

「選手が育ち始めた頃からはしっかりコミュニケーションを取る姿を見かけるようになった。だから非情とも思える采配をしてもチーム内に不協和音は出なかった。選手自身も工藤監督のもとで成長できている手応えがあったのだろう」(ソフトバンク関係者)

 2020年の日本シリーズ第3戦(vs巨人)では7回までノーヒッター継続中だった先発のムーアを交代させたこともあった。だが、この時もベンチ内で工藤氏自ら歩み寄り事情を説明し、ムーアも納得したような姿を見せていた。これも普段から選手との関係性の積み重ねがあったからこそだろう。

「選手交代のタイミングも絶妙で大事な試合になるほどハマった。選手のコンディションや調子をしっかりと把握できているからだろう。プロ野球の世界で勝つことを知り尽くした百戦錬磨の凄みを感じた」(ソフトバンク関係者)

 ソフトバンクでは「日替わりオーダー」が専売特許だった。「選手が固定できない弱小ですから」と当時の工藤氏は笑っていたが、試合当日の状況を把握できているから可能となる。選手の観察はもちろん各コーチの意見にもしっかり耳を傾けオーダーを決めていたという。

「チームが勝つため、選手が上達するために全てを注ぎ込む情熱がある。日本シリーズでも朝イチで球場へ来て、コーチやスタッフとミーティングを行っていた。工藤氏の本気、覚悟がチーム全体に伝染していったのではないか」(ソフトバンク担当記者)

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「やはり工藤はすごかった」