「10年以上前には、食物アレルギーは消化管でアレルゲンが吸収されることで起こる『腸管感作』という現象が主体と考えられていました。しかし近年の研究結果から、アトピー性皮膚炎のように炎症のある皮膚からの『経皮感作』が主な原因とわかってきたのです」(大矢医師)

 こうした点が「皮膚に目を向けることが重要」という理由です。

 

 皮膚の乾燥を治すには、炎症を抑えるステロイド外用薬と保湿剤を中心としたスキンケアが必要です。田中医師は、「治療をしているけれど、湿疹がなかなかよくならない場合は専門医にかかって、ステロイド外用薬の塗り方を指導してもらいましょう」と話します。

「『ごしごしとすり込むのはNG』など正しく塗るためのコツがあります。また、薬をすばやく楽に塗れるテクニックもあります。参考までに当院では約5分で全身に塗る方法を指導しています」(田中医師)

 もう一つ大事な点は、見た目がきれいになってもしばらくは薬を塗り続けることです。

「きれいに見えても皮膚の下では『炎症』という火種が隠れています。この『隠れ炎症』がなくなるまで薬をしっかり塗り続けることが大事です」(同)

提供:サノフィ株式会社 監修:田中暁生医師

 きちんと外用薬を続けていると、やがてステロイド外用薬を塗る回数や量を減らしても、かゆみや湿疹が出にくくなります。隠れ炎症が完全になくなるとステロイド外用薬はいらなくなり、他の外用薬や保湿剤、最終的には保湿剤だけでツルツルの肌を維持できるようになります。

「治療のゴールに到達するまでの期間は患者さんごとに違いますが、どんな人でも達成可能です。子どものときから何十年も病気に悩まされてきた50代の患者さんがよくなったケースもたくさん診ています。ステロイド外用薬でよくならない場合は内服薬や注射など、次なる有効手段があるので、あきらめないでほしいと思います」(田中医師)

(文/狩生聖子)

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