「魂の殺人」と呼ばれるほどの過酷な性暴力は、どこまでも被害者を苦しめる(撮影/写真映像部・高野楓菜)
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 性暴力被害は、トラウマ体験の中でもっともPTSDを生みやすく、さまざまな症状に悩まされる。識者が性被害の深刻さを解説する。AERA 2023年10月30日号より。

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 数百人ともいわれる規模の、過去に例のない故ジャニー喜多川氏の性暴力は、被害者たちの心に計り知れない傷を負わせた。

「度重なる幻聴やフラッシュバックで、自殺願望も抱くようになりました」

「性行為に恐怖感や不安を抱き、この年になるまで女性と関係を持ったことはありません」

 ジャニー氏による性加害問題を調べた弁護士らからなる「再発防止特別チーム」が8月末に公表した報告書で、ジャニー氏から被害を受けた被害者たちはこう証言している。

 恐怖体験が蘇る「フラッシュバック」も、出来事に関連する状況を避ける「回避」も、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の典型的な症状だ。

「性暴力被害は、さまざまなトラウマ体験の中でもっともPTSDを生みやすく、被害を受けた20%から50%の人が発症するといわれます」

 精神科医で性暴力被害者の支援に携わる、武蔵野大学副学長で教授の小西聖子(たかこ)さんはそう話す。

 トラウマは、圧倒的な恐怖の体験によってもたらされる心の傷だ。トラウマ体験を機に、記憶に蓋をしたり、フラッシュバックを起こしたり、心身の不調が続く状態をPTSDという。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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