二つのネット媒体に出て「テレビはもうすぐ終わる」という思いを強くした。民放はCMを観る代わりに無償で質の高いコンテンツを享受できるというよくできたビジネスモデルだった。でも、「質の高い」という条件がいつの間にか失われてしまった。「あんなものより、金を払ってもいいから質の高いものを観たい」という人たちが身銭を切ってサポーターになり、ネット媒体を財政的に支えている。

 小さいが個性的な媒体が今次々と生まれている。いずれいくつかのトピックについてはテレビよりネット媒体の方が情報の信頼性が高いと言われる時代になるだろう。

 この現状を見ていると、絶滅に瀕した恐竜の足元を小型齧歯類が走り回る地質学的転換点を連想してしまう。

AERA 2023年10月30日号

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内田樹

内田樹

内田樹(うちだ・たつる)/1950年、東京都生まれ。思想家・武道家。東京大学文学部仏文科卒業。専門はフランス現代思想。神戸女学院大学名誉教授、京都精華大学客員教授、合気道凱風館館長。近著に『街場の天皇論』、主な著書は『直感は割と正しい 内田樹の大市民講座』『アジア辺境論 これが日本の生きる道』など多数

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