取材では様々なカップルに話を聞いた。結婚式場の予約に訪れていた男性は、「日本は結婚によって、その家の者になるという風習がある」と答え、女性は「名前を変えることはあまり気になりません」と当たり前のように答えた。
一方で、旧姓を通称として使って働く百貨店の女性社員は、「名前は上下セットでつながってひとつのものになっている。別々の名前を名乗っていても夫婦という事実は変わらない」と話していた。
それから約30年。「選択的夫婦別姓」をめぐる日本の風景はまったくと言っていいほど変わっていない。民法の改正がいまだ実現していないことには驚くしかない。
1996年に法制審議会は5年余の審議を経て、選択的夫婦別姓制度導入を答申したものの政府は動かず、夫婦別姓を認めない日本の民法規定が差別的だと、国連から何度も勧告を受けている。
今や内閣府調査以外の各種世論調査では、6~7割が「選択的夫婦別姓」の導入に理解を示している。自らの生活に関係する若い世代になればなるほど、その傾向は高い。それに、あくまで「選択的」なのだから、現実に法改正されても過半数の夫婦は同姓を選ぶ可能性が高いと見られている。「選択的夫婦別姓」を認める方針を打ち出している連立与党の公明党から「自民党も社会の変化などを直視して時代に合った判断をすべきだ」(山口那津男代表)と促されているのは皮肉でしかない。