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 日本では長年、選択的夫婦別姓制度の導入が検討されてきたが、いまだに実現していない。1990年代半ば、男女平等や男女共同参画を背景に制度導入の機運が高まっていたが、小塚かおる・日刊現代第一編集局長は、「2023年の今の方がむしろ自民党内に反発や嫌悪感を示す空気が強い」と指摘する。朝日新書『安倍晋三 VS. 日刊ゲンダイ 「強権政治」との10年戦争』から一部を抜粋、再編集して解説する。(肩書は原則として当時のもの)

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 私が「選択的夫婦別姓制度」について初めて取材したのは、大阪のテレビ局で駆け出し記者だった1994年2月のことだ。

 91年に法務省の法制審議会で民法の「婚姻制度等の見直し審議」が始まり、94年春には有識者会議の試案がまとまるというタイミングだった。85年に日本政府が国連の女性差別撤廃条約を批准し、その翌年、男女雇用機会均等法が施行されるなど、日本社会における「男女平等」や「男女共同参画」という意識の芽生えの延長線上に、「選択的夫婦別姓」の議論もあった。

 当時は、会社勤めの女性の「旧姓使用」もまだ珍しい時代だ。国立大の女性教授が仕事上での旧姓使用を求めて裁判を起こしていたが、「同じ姓で夫婦の一体感が高まる」として東京地裁は93年11月に訴えを棄却していた。

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「選択的夫婦別姓」になぜ反対?