風屋グループの松尾政彦代表

 オランダに本社のあるブッキングドットコムを運営するブッキングホールディングスの1~6月の売上高は約1兆5000億円。純利益は約2500億円という巨大企業だ。
 

3か月止まったらアウト

 支払いの遅延が始まったのは8月上旬だった。

 松尾さんの場合、「最初、8月3日に振り込みます、ということでした。それが、3日の夕方になったら、5日になりました。次の日には、10日になりました。で、10日がくると、15日になりました、という具合にどんどん遅れていった」。
 

 食材費や光熱費、従業員の給与のほか、社会保険料の支払いを迫られる一方、宿泊利用者から振り込まれた代金はブッキングドットコムから一向に支払われない。

「宿泊予約のメインがブッキングドットコムで、運営施設が一つだけのオーナーの場合、3カ月も支払いが止まったら、普通は完全にアウトですよ。

 ゼロゼロ融資は終了し、銀行はお金を貸してくれない。そんなところがたくさんある。うちも、商売をたたもうか、悩みました。運よく一部の不動産を売却できて資金繰りがつきましたけれど、でなければ1000万円ほど資金不足になっていました」

 と、松尾さんは語る。

 同業者から入手した録音データには、ブッキングドットコムのカスタマーセンターには全国の宿泊施設のオーナーから、入金を求める悲鳴のような声が寄せられていた。

「カスタマーセンターの若い子たちは、泣きたいくらいだったと思いますよ。みんな明確な情報がほしいから詰め寄るわけですが、オペレーターは何も事情がわからないから、罵倒されても、『すみません、すみません』と謝ることしかできない。

 未払いなのは、もともと私たちの金です。それが支払われないのに、上の人間は誰も対応しない。不信感を抱くようになりました」
 

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?
次のページ
「本社でないと何もわからない」