さらに、多くの被害者が声を上げるのを躊躇しているのは、ブッキングドットコムの「報復」を恐れているからだという。
報復というのは、例えば、宿泊施設の予約サイトへの掲載停止などだ。
「それは、ECをやっている人がアマゾンとの取引を停止されてしまうような感じです。つまり、ブッキングドットコムに切られるのは、宿泊業者にとって、死活問題なんです」
と、松野さんは説明する。
宿泊予約サイトの世界ではブッキングドットコムの集客力は圧倒的で、ライバル企業は存在しない。松尾さんも
「ぼくたちにとって、ブッキングドットコムは絶対に必要で、共存してもらわなければ困る」
と、複雑な一面を漏らす。
その言葉を松野さんは、こうつないだ。
「世界中からお客様を呼んできてくださるブッキングドットコムさまが未払いなんです。愛しているけど、憎い」
けんかをしたいわけではない
10月10日、ブッキングドットコムはホームページに「支払い遅延に対する一部報道について」という文章を掲載し、システムの更新によって技術的な問題が発生して支払いが期日通りにされていないことを謝罪した。
ただ、「一部のみのパートナー各社の皆様におかれまして、支払いの遅延が発生しており、現在緊急に対応させていただいております」という文言と、被害者オーナーらの話には大きな落差がある。
AERAdot.が取材を申し込むと、
「ブッキングドットコム日本法人にはメディア窓口はなく、オランダ本社に問い合わせてほしい」
という回答だった。
松尾さんは言う。
「別にブッキングドットコムとけんかをしたいわけではありません。ただ、同業者が首をくくるかもしれないという状況で、このようないい加減な対応を断じて受け入れることはできません」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)