提訴後に会見する原告会社の松野久美子社長(左)=10月20日、東京・霞が関
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 世界最大の宿泊予約サイト「ブッキングドットコム」の旅館やホテルへの宿泊代金の支払いが滞っている問題で、宿泊施設のオーナー11人が20日、オランダ本社と日本法人に対して損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。国内での被害額は数十億円から数百億円に上る可能があるという。原告は「今回の未払いがどれほど深刻な問題を引き起こしているのか、いまだにブッキングドットコムは理解していない」と憤っている。

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 原告の一人、岐阜県や奈良県で複数の宿泊施設を運営する風屋グループの松尾政彦代表は18日、ブッキングドットコム日本法人の竹村章美代表取締役と面会した。

 しかし、松尾さんは、

「本当に失望しました」

と、やるせなさを口にした。

「なぜこのような未払いが長引いているのか、その原因を知らない。だから具体的な解決策は何も答えられない。この数カ月に費やした労力はいったい何だったのか」
 

世界的な大企業がなぜ

 ゼロゼロ融資で資金をつなぎ、コロナ禍をしのいできた宿泊業界。ところが、ようやく客足が戻ってきたタイミングでブッキングドットコムの支払い遅延問題が起こった。それはまったく想像すらしなかった出来事だった。

「システムメンテナンスのため、入金が遅れます」というブッキングドットコムからの一方的なメールが宿泊施設に届いたのは、6月上旬のことだった。

「最初の1カ月くらいは当然、払ってもらえると思っていたんです」

 もう一人の原告で、民泊などを経営する松野久美子さんは振り返る。今は3カ月分の宿泊代金約600万円を立て替えているという。

「ぼくもまったく同じように思っていました。世界的な大企業のブッキングドットコムがそんな額の入金をできないなんて、あり得ませんから」

 と、松尾さんはうなずく。

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支払いはどんどん遅れていった