年間死亡者数が7万5585人(男性5万3247人、女性2万2338人/2020年国立がん研究センターがん統計)と、がんのなかで最も亡くなる人が多いのが肺がんです。発見された時点で、治るための手術を受けられる人は4割程度で、「難治性」といわれる肺がんですが、近年はさまざまな治療の進化により、徐々に「生きられるがん」へと移行しつつあります。また、喫煙習慣のない若い女性に、肺がんの一種の「腺がん」が見つかる事例が増えています。
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本記事は、2024年2月下旬に発売予定の『手術数でわかる いい病院2024』で取材した医師の協力のもと作成し、先行してお届けします。
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肺は呼吸を通じてからだの中へ酸素を入れて、二酸化炭素を体外に出す重要な役目を果たしている臓器です。肺がんは比較的転移しやすいがんで、進行すると血液やリンパ液によってがん細胞が全身に流れていき、肺のほかの場所やリンパ節、骨、脳、肝臓、副腎などに転移します。
肺がんはその組織型(がんの種類)によって、「腺がん」「扁平(へんぺい)上皮がん」「大細胞がん」「小細胞がん」に分類され、小細胞がん以外の三つは、「非小細胞がん」といわれます。患者数は腺がんが一番多く、肺がん全体の5割、非小細胞がんの75%程度を占めます。この記事では、最も割合の多い非小細胞がんの腺がんについてくわしく説明していきます。
たばこを吸わなくても肺がんになることがある
この最も多い腺がんは、喫煙の習慣がない人でもなるがんです。肺がんといえば、「長年の喫煙」が原因だと考える人も多いと思いますが、喫煙の影響が非常に大きいのは扁平上皮がんと小細胞がんです。腺がんも喫煙がリスクになりますが、喫煙の習慣のない若い女性にも起こることが多いのが特徴です。その原因はよくわかっていません。たばこを吸わないから肺がんにならないというわけではないのです。
肺がんが厄介なのは、早期がんでは自覚症状が出にくいことです。自治体の検診のX線検査で疑われて見つかることもありますが、せき、たん、血たん、発熱、呼吸困難、胸痛などの症状が表れると進行していることが多いです。またこのような症状があってもほかの呼吸器の病気との区別がわかりにくいです。