通常、手術が可能なのは3期の一部まで。さらに進行した場合は手術ができないため、放射線療法や薬物療法も加えた化学放射線療法をおこないます。

 4期は、薬物療法を行います。近年、肺がんの薬物療法は、目覚ましい進歩を遂げて、通常の抗がん剤のみならず、がん細胞に特有のたんぱく質や遺伝子の異常を狙い撃ちにする「分子標的薬」、そして免疫ががん細胞を攻撃する力を取り戻す「免疫チェックポイント阻害薬」の登場で、飛躍的に生存率が伸び、根治に近い状態になる場合もあります。

 このように治療の進歩は目を見張るものがありますが、冒頭に記したように、肺がんは発見された時に手術を受けることができる人は4割程度。肺がんを根治に導くための大前提は早期発見です。

早期発見のためには、胸部CT検査がお勧め

 肺がんは早期では自覚症状があまりなく、せきやたん程度では、風邪や他の呼吸器の病気と思ってしまうこともしばしば。通常の自治体などの検診では胸部X線が主流ですが、渡辺医師は「胸部CT検査」を受けることを勧めます。

「CT検査によって、早期の肺がん、特にたばこを吸わない若い女性で、腺がんが多く発見されています。0期のすりガラス陰影を見つけるのは胸部X線では難しいです」

 新しいCT検査機器は高性能で、がんがミリ単位でわかり、X線の10倍の発見率ということです。通常のCTの5分の1程度の被ばく線量の少ない「低線量胸部CT」も登場しました。渡辺医師はこう訴えます。

「薬の進歩により、肺がんは昔のように死ぬ病気ではなくなりつつあります。たばこを吸わない人であれば、年に1回CTを撮っていれば手遅れの肺がんが見つかることはありません。40歳を過ぎたら、一度CTを撮ってみてはいかがでしょう」

(文・伊波達也)

国立がん研究センター中央病院 呼吸器外科科長 渡辺俊一医師
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