ほかのがん同様、病期(ステージ)が決められていて、大まかに0期、1期、2期、3期、4期に分けられます。最も早期がんの0期は、淡い影のような「すりガラス陰影」があるとして発見されますが、これが早期の腺がんで、手術をしないで経過観察をする場合もあります。国立がん研究センター中央病院呼吸器外科の科長で、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の肺がん外科グループ代表を務める渡辺俊一医師は次のように説明します。

「肺がんは亡くなる人が多い『怖いがん』と思われていますので、『もう終わりだ』と考える患者さんも多いです。しかし、ごく早期のすりガラス陰影といわれる腺がんは、CT検査でしか見えないようながんで、周辺部の影が淡く直径1.5センチ以下であれば、日本肺癌学会のガイドラインでは経過観察です。『様子を見ていても大丈夫ですよ』と話すと患者さんは安心します。なかには不安なので手術をしてほしいという人もいますが、大きくなってから手術をしても手遅れにはなりませんと説明しています」

初期の腺がんでも悪性度が高そうな場合は手術を検討

 実は今から20年以上前には、1センチより小さい腺がんであっても、すべて手術するのが一般的でした。しかし臨床研究で調べていくうちに、比較的「おとなしいがん」であることがわかったのです。1センチ以下のすりガラス状の腺がんで女性の場合は、5年後にがんが大きくなっている人は1割程度しかいませんでした。残りの9割の人は大きくならないで、なかには一生そのままの状態の人もいたそうです。腺がんはこの点でほかの三つ、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんとは、大きく異なる特徴を持っています。

「経過観察して、たとえば5年たって大きくなったならその時に、肺を部分的に取る手術をすればよく、術後の化学療法もいりません。ただ、なかには要注意のものがあって、肺の正常な部分とがん化したすりガラス状に映る影との境界線がはっきりしている場合です。こういうがんは悪くなる可能性があるので手術が検討されます」(渡辺医師、以下同)

「小さくておとなしい腺がんだから放っておいていい」と安直に判断するのは問題だということです。初期の腺がんでも悪性度が高そうな場合、そして直径1.6センチ以上ある場合、さらに腺がん以外の非小細胞がん(扁平上皮がん、大細胞がん)では一般的に根治のための手術を選択します。小細胞がんは見つかった時点で進行しているため、手術はおこないません。

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肺がんの薬物療法は、目覚ましい進歩を遂げている