「(建設費は)上振れしないようにすると、はっきりおっしゃっていたこともありました。今は上振れしないと断言できないと思うんです。どう説明しますか」

 記者からそう質問された吉村知事は、

「上振れしないと断言しました? 上振れしないように努めていくというのは当然のことで、上振れしないというのはどこの段階でも難しいと思います。今、資材費、人件費が上がってきているのですから。これは増額要素があるということで受け止めています。それがどうなるのか、ということで今、万博協会が(建設費の額を)精査しています。上振れしないように精査していくのは当然のことだと思うので、それは変わらないです」

 などと答えたが、なんともはっきりしない表現で、これまでの勢いの良さは消えていた。

 こうした増額不可避の方向に、日本維新の会の国会議員は、

「いくら物価高騰があったとしても、建設遅れで開催が危ぶまれているタイミングで2350億円への増額はヤバイ。増額なく成功させればまさに維新のおかげ、手柄。だが、増額となれば維新の屋台骨が揺らぎかねません。維新の支持の源は『身を切る改革』です。全然切ってないことになる」

 と危惧する。

②阪神・オリックスの優勝に便乗するも

 2350億円への増額がニュースで報じられはじめたのは9月中旬あたりだった。

 大阪府の幹部がこう打ち明ける。

「吉村知事はこのあたりからかなりイライラを募らせて、『一部で報道されているだけ。決まったわけじゃない』などと周囲に漏らしていました。万博関連で何か発信しなければならないけど、マイナス要素ばかりが強調されているという話が庁内で出ました。そこで便乗したのが阪神オリックスのリーグ優勝です」

 両球団が優勝を決めると、吉村知事は9月22日、兵庫県の斎藤元彦知事らと記者会見し、11月23日に大阪市と神戸市で両方のパレードを開催することを発表した。

 その名称は、

「阪神タイガース、オリックス・バファローズ優勝記念パレード2025年大阪・関西万博500日前!」

 という不思議なものだった。両球団の優勝と万博は何も関係がない。

 吉村知事は「関西を盛り上げ、万博にもつなげていきたい」などと語っていたが……。

阪神とオリックスの優勝パレードの実施について発表する関西経済連合会の松本正義会長(左から2番目)と、大阪府の吉村洋文知事(左)、兵庫県の斎藤元彦知事だが、「ミャクミャク」だらけ
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