山口真一准教授

 更に、こういった技術を多くの人が使えるようにしていく、「技術の民主化」が重要だという。

「たとえば、画像や動画、テキストをアップロードすると、AIが作ったものかどうかを確率で示してくれるサービスが考えられます。あるいはSNSに、該当の投稿をAIが作成した確率があるかをラベリングする機能を実装することも有効だと思います」

「情報検証行動」は必須

 また、山口氏はこうも言う。

「情報コンテンツが増加すれば、フェイクニュースも増えていくことは避けられません。しかし、人類はフェイクニュースに対する付き合い方も編み出していくと私は見ています。世界的なルール作りが進んでいますし、メディア情報リテラシー教育の重要性も注目されるなど、問題の解決に向け、活発な議論が交わされています」

 フェイクニュースとの付き合い方の変化のひとつとして、山口氏は、「若い世代ほど、情報に対して批判的な目を持っている」と指摘する。同氏の調査によると、情報の発信主体を確認したり、検索で他の情報源にも当たってみたりなどの「情報検証行動」を取っているのは、10代が最多だった。

情報を精査する「目」が必要だ。ファクトチェック・イニシアティブのファクトチェック・ナビ(https://navi.fij.info/)から

「彼ら彼女らはデジタルネイティブです。誤りのある情報があるのは当たり前の環境で育ってきた。なので、情報を批判的にみるという姿勢を自然と身に着けているのだと思います。もちろん、情報社会においては最低限必要な姿勢ですが、こういった世代が徐々に増えていけば、フェイクニュースをめぐる問題も改善に向かう可能性はあると考えます」

 ただし、同調査では、10代~60代の77.5%がフェイクニュースを見抜けていないという結果も出ている。

「つまり、誰でもフェイクニュースを拡散してしまう可能性があるということです。他の研究では、『自分は情報の真偽判断能力が高い』と思っている人ほど、偽・誤情報に気づかず、また、拡散しやすいということがわかっています。拡散したいと思ったときには、『自分は騙されない』と過信せずに、その情報を検証し、真偽がわからない場合は拡散しない、ということが大切だと思います」

(AERAdot. 編集部・唐澤俊介)

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