
作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。今回は松本紹圭さんがお坊さんになったきっかけを伺いました。
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大宮:就活はされたんですか。
松本:哲学科でも、みんな哲学者になるわけではないんで、周囲も大学3年生の後半ぐらいで、就活し始めて。当時は、私も就職か進学ぐらいしか選択肢を知らなかったです。
大宮:そうですよね。わかります。
松本:自分には広告代理店が合ってそうだなとも思ったんです。で、広告代理店に就職して50歳になった頃をイメージするわけです。すると想像できるような気がして、もういいやってなっちゃって。想像がつかない人生を生きたいと思っていたので。
大宮:想像つかない就職というと?
松本:駒場時代から友人だった同級生にお寺の息子がいて。彼は進学したけど、いずれお坊さんになるって言ってて。私も母方の祖父が北海道で住職をしているから、お坊さんという存在になじみはあるわけですよね。ただ、いとこが跡を継ぐので、自分がまさかお坊さんになるとは想像してなかったんですね。だけど、お寺を継がなくてもお坊さんになれると知ったときに、急にピンと来ちゃったんですよね。就職って人材マーケットに自分を身売りするというか合わせていかなきゃいけない。それ自体にしっくりきていなかったので、就職でも進学でもない、第三の選択肢「出家」って思ったら、急にグッときまして。
大宮:お寺に就職ですか?
松本:結果的に就職です。でも、リクナビとかにお寺が出ているわけじゃないんで。なので、なれる可能性があることは分かったけど、なり方が分からない。さきほどの駒場時代の友人が下宿していたのがこの神谷町光明寺。ここの住職も赤門出身で。
大宮:えー。東大卒のご住職。ご縁ですねぇ。
松本:先輩が住職をしているお寺っていうことで、話を聞いてみようと訪ねました。で、「結構大変だよ」と。
大宮:どのへんが大変と?