松本:修行が大変ってよりも、跡継ぎだったら継ぐ寺もあるけど、根無し草な感じで来ると苦労はあるよ、と。それでもよければ来なさいって。
大宮:なるほど。でもすごい、来なさいってなったんですね。でも、すぐ来たら?ではなかったんですね。
松本:明治以降、宗派を問わずにお坊さんが家族を持つようになって、世襲が主になってきたので、そこにバックグラウンドのない人が入っていくのは、道は開かれているけれども、人一倍苦労をする。
大宮:どう入っていかれたんです?
松本:まずは給料とかもいらないんで、みたいな感じで住み込みの弟子入りって言うんですか。相撲部屋や落語界みたいな感じだと思います。寺に住んで、ご飯は住職家族と一緒に食べてました。寺の娘さんの幼稚園の送り迎えとかもしました(笑)。
大宮:ほうほう、つまり、家族になっちゃうんですね。
松本:拡張家族的な感覚はありますね。立ち位置としては個人事業主なんです。だんだんと本を書いたり、講演、法話をしたり個人活動をするようになりました。
大宮:在学中に実はビジネスを開拓する志向があったとかです?
松本:うーん。会社を経営する父を見て育ってるから、自分で生きていくもんだという感覚っていうか。
大宮:やっぱり。なかなかできないことですよ。その発想も実行力も。ご両親は心配されなかったんですか。
松本:父は経営者なので「自分の生きたいように生きろ」って。でもそう来たか、っていうのはあったと思います。母は実家がお寺だから理解はあるというか。
※AERA 2023年10月16日号