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 早期で発見された乳がんは、5年生存率がほぼ100%です。しかし、2020年の国内年間死亡数は1万4779人(女性1万4650人、男性129人)で、進行すると命に関わり、女性では5番目に死亡者数が多いがんです。女性がかかるがんのなかで最も多いため、患者数が増え始める40歳を超えたら、検診などで積極的に早期発見を目指しましょう。20代、30代から取り組んでほしいセルフチェックについても、取り上げています。

【チェックリスト】乳がんの発症リスク因子5つはこちら

 本記事は、2024年2月下旬に発売予定の『手術数でわかる いい病院2024』で取材した医師の協力のもと作成し、先行してお届けします。

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 乳がんは乳房の中の組織、乳腺の乳管や小葉などにできるがんです。まれに男性に発症することもありますが、患者の大半は女性で、日本では女性の9人に1人がなるといわれています。近年患者数は急増していて、2005年は5万人台だったのが、19年には10万人弱とほぼ倍増しています。その理由について、がん研有明病院乳腺センター顧問で、相良病院(鹿児島県)院長の大野真司医師は次のように話します。

「乳がんというと、なんとなく若い人がなるイメージがあると思いますが、実はそうではありません。若い人はそれほど増加傾向にはなく、近年増えているのは50歳以上の閉経後の女性で、4分の3を占めています。なかでも特に60代、70代の人が多くかかるがんです」 

 一方で、50歳未満で発症する患者が4分の1いることを忘れてはいけません。「乳がん検診の適齢期といわれる40歳を過ぎたら注意すべき」と大野医師は注意を促します。

生活習慣の欧米化で患者が増加

 さて、乳がんにかかる人は、なぜ近年日本で増えているのでしょうか。

「初潮が早い、初産の年齢が遅い、産む子どもの数が少ない、閉経が遅い、これらが乳がんの発症のリスクを上げます。乳がんは、女性ホルモンの影響が最も大きく、女性ホルモンにさらされる時間が長ければ長いほどリスクが高まるのです」(大野医師、以下同)

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閉経後は肥満に注意が必要