さらに食生活をはじめとする「ライフスタイルの欧米化」が大きく関わっているそうです。2000年以前のデータでは、同じアメリカ国内に住んでいる日系人と欧米人で乳がんの罹患率は変わらなかったところから、生活習慣との因果関係があると専門家はみているのです。

「女性ホルモンは閉経までは卵巣でできていますが、閉経すると卵巣は眠ってしまいます。その代わりに、脂肪組織で女性ホルモンが作られるようになります。ですから、閉経後はふくよかな人ほど女性ホルモンの量が多いので、いわゆる欧米型の食事をしている人はリスクが高くなると考えられます」

 日本人も欧米人に近い体格の人も増えていますし、少子化、晩婚化など、社会的背景によるさまざまな変化、要因によって、乳がんになる人が増えています。そのほかにも、喫煙やアルコールの過剰摂取などが乳がん発症の可能性としていわれています。予防という観点でできることとしては、生活習慣に気をつけるということ。特に閉経後の人は、肥満に注意しましょう。

若い時から自分の乳房に関心をもつことが大切

 乳がんは多くの場合、乳房にしこりができるため、自分で触って気づくこともあります。また、乳房にくぼみやひきつれができる、左右の形が非対称になるなどといった変化があったり、乳頭や乳輪がただれたり、乳頭から分泌物が出たりするなど、見た目で自覚症状を得やすいがんです。これらの症状がある場合には、乳腺外科、乳腺科、外科などを早急に受診しましょう。女性の疾患を網羅的に診療している女性専門クリニックでもいいでしょう。

 近年では、「ブレスト・アウェアネス」が重視されています。これは1990年代にイギリスで提唱され、「乳房を意識する生活習慣」を意味します。

「女性の皆さんは、まず自分の乳房について関心を持ってください。自分で胸を触診したり観察したりして、何か気づくことがあったら、早めにクリニックや病院を受診することを勧めています。もちろんそれとは別に、定期的に検診も受けましょう。自治体の補助によって検診を受けられるのは40歳からですので、それ以前の年齢では特に『ブレスト・アウェアネス』を意識するといいでしょう」

 前述したように「9人に1人がなる」ということを認識して、病気になる前に乳がんのことを考えてほしいと大野医師は強調します。乳がんは、がんのなかでも生存率が高いがんですが、進行すると、乳房の中で広がったがん細胞が、血液やリンパ液の流れに乗って、他の臓器(乳房近辺のリンパ節、骨、肝臓、肺、脳など)に転移することもあります。早期の生存率が高いからといって、決して甘くみてはいけないのです。

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がんを取った後の乳房の「整容性」も重要