鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・上田泰世)

アドバイスで、指示するのはNG

――誰かの相談に乗る上で気をつけていることはありますか?

鈴木:鴻上さんの人生相談って、「どうしたらいいですか?」っていう質問に、問いで返しますよね。「あなたはこの場合どう思っているんですか?」とか。

鴻上:それはね、役者さんにアドバイスするときの方法と同じなんですよ。たとえば、役を演じる上でメガネをかけてほしいと思ったら、あえて「どうすればインテリっぽく見せられますかね?」って聞いてみる。で、役者さんが「メガネとかですか?」って言ったら、「それいいですね!」みたいな。指示するのではなく、本人が気づいたようにすると、納得してくれるし絶対忘れないんです。

鈴木:私の場合、「変な男と付き合って困ってます」っていう相談が来たら、昔、酒場で働いていたときの事例を持ち出して、「いやもっと変な男いるから!」ってお茶を濁すことが多かったです(笑)。そうやって中和することが、私の役目なのかなとも思っていて。でも、鴻上さんの「ほがらか人生相談」は、質問者だけじゃなく読者自身も問われている気がして、深く考えさせられる。私にとっては憧れです。鴻上さんって、相談を受けて困るときもあるんですか?

鴻上:僕は、苦しんでいる状態から抜け出そうと思っていない人の相談は、受けないことにしています。たとえば、明日が舞台のリハーサルだっていうときに、すごく調子の悪そうな女優さんがいてね。「どうした?」って聞いたら、「俳優をやっている彼氏が、昨日役を下ろされて落ち込んで、夜中に会いに来たから、一晩中寝ないで慰めていたんです。私どうしたらいいでしょう?」って。そんなときは、「君はプロになりたいの?」って聞きます。本気でプロになろうとしている子なら、「そんな男とは別れたほうがいいと思うよ」って言う。でも明らかに恋愛をとろうとしている子なら、本人はその状況を悲劇のヒロインとして楽しんでいるだけなんだから、言ってもしょうがないよねっていう。

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女の恋バナは、相談に見せかけた…