障害があってもお友達と

 さて。私が話したことの中で、野田さんが一番興味を持って下さったのは、息子の幼稚園の受け入れ先が見つからず、日本を捨てて(?)ハワイに行ったことと、障害のある子どもとのハワイでの生活に関することでした。今回に限らず、講演などで我が家の話をする時にはほぼ必ず出る質問です。たしかに、いきなり障害のある子ども2人と未就学の子を連れて日本人がひとりでハワイで生活しようと考えるのは、今、自分で思い返してもなかなか無いことなのだろうなと思います。

 何度かこのコラムでも書いたと思いますが、私はハワイに伝手(つて)があったわけでも、流暢な英語を話せたわけでもありません。ただ、寝たきりでコミュニケーションが取れない4歳の長女と、膝下だけの障害で座っていればどこにでもいるような3歳の長男が、当時の日本のシステムでは同じ場所に通うことにどうしても納得がいかなかったのだと思います。歩けなくても言葉を話すようになった息子に、お友達と過ごす時間を作り、教育を受けさせたかったのです。当時はかなり珍しい考え方だったと思いますが、あれから10年以上経った今、自分では底辺だと思っていたできごとに興味を持ってくださる方がいることに、当時の自分が救われたような気がしています。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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