「コロナ禍で生活スタイルの大きな変化が、女性の心境を大きく変化させたように感じます。自宅でのリモートワークを含めて女性が活躍する場所が増えたことで働き方の選択肢が増えたと共に、コロナ感染という想定していなかった事態に見舞われて将来の人生を見つめ直した時、目を背けていた夫婦関係を考えるようになった」と指摘した上でこう続ける。

 「夫に言葉の暴力を受けても耐え続けるしかなかった『昭和の倫理観』は時代遅れです。夫から生活費をもらえずに辛い日々を送っていた専業主婦がコロナ禍で資格を取り、株の勉強をしてファイナンシャルプランナーになったケースもありました。MEGUMIさんや宇賀さんのようにマルチな世界で活躍されている方たちだけでなく、経済力の不安を解消して離婚に向けて準備をする女性が増えています」

 岡野さんは、「離婚がベストの決断」とは思っていない。相談に訪れた女性から夫婦関係、家族構成、夫婦それぞれの経済力、子育てにかかる今後の費用などを細かくカウンセリングをするという。

 「誤解されやすいのですが、私の仕事は離婚させるのが使命ではなく、相談者のために最善の策を探ることがポリシーです。夫婦関係が修復できると判断すればその方向性で話し合いを重ねます。相談に来る方の性格や価値観も様々です。『どうしても離婚したい』とおっしゃる方の中にも、将来の経済的なシミュレーションができていなかった場合は、すぐに離婚するのではなく仕事を含めた準備をするように勧めたり、『幸せじゃないから離婚したい』、『離婚してすぐに再婚する』と漠然と話す方には、そのような考えで離婚しても幸せをつかめるほど甘くはないことをはっきり伝えます。こちらが夫婦関係の修復を提案して、『どうしても離婚したい』とおっしゃる方もいらっしゃいます。ただ、それは全く問題がありません。私のアドバイスが最善で最良だとは思っていないですし、最後に決断するのは相談に来られた方自身ですから」。

 コトの重要性に気づかず、離婚後に後悔する男性も少なくない。幸せの在り方を考えた時に、結婚生活を続けるか離婚を決断するか――。離婚にネガティブなイメージを持つことが、時代遅れの認識になっていることは間違いない。 

(今川秀悟)

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