私は、ホームランやクリーンヒットを量産するタイプのタレントではない故、テレビの仕事をする上で似たようなことは頻繁に起こります。しかし、13年もレギュラーを張っているホームグラウンドで、この鈍さは明らかな「失態」でしょう。

 ちなみに番組は1時間の生放送です。スタッフが発する「5秒前!」の声を合図にギアをトップに入れ、放送が終了すると同時にエンジンを切り、運転席から降りる。極めて刹那的とも言えるこの仕事スタイルが私は好きです。上手くコースを進めなかったり、アクセルを空踏みしたり、時にはブレーキをかけられずに事故を起こした経験も数知れず。それでも毎週決まった時間にテレビ画面の中に現れる「役」を、これだけ長く演じられることは、常に行き当たりばったりの人生を歩んできた私にとって、とても幸運な機会だと感謝しています。
 

「今までのゲストでもっともやりにくかった人は?」の話に戻りましょう。

 言い訳がましいですが、私ごときの力では、いまいち盛り上げられなかったゲストや、面白くできなかった週などは数知れず。むしろ「この番組やり辛い!」と感じたゲストの方がたくさんいるのではないでしょうか。

 その週のゲストが、どんなに個人的思い入れが強い人であっても、ほとんど知らない人であっても、たとえ良い印象を持っていない人だったとしても、17時00分に始まる番組を17時58分の終了時間まで操縦していくという点では、私のスタンスは毎週変わりません。これは水商売も同じです。お得意様・指名客・一見様などいろいろあっても、席にお通しすればお客様に変わりはない。その晩のお店を閉店時間までどうやって満足頂ける空間にするか。それがお水の仕事でした。仮に「出禁」になったお客がいたとしても、それはホステスではなく、スタッフが決断するという部分においても似ています。
 

 私は、仕事の反省や振り返りを基本的にしない性質ですが、今回は珍しく、帰宅してから「あれはどう答えるのがベストだったのだろう」と反芻してみました。そこでひとつ分かったのは、「やりにくいゲストなんていない」という答えは、テレビ的にはダメだけど、私の「本心」だということです。
 

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